2015年4月23日 ワンコインセミナー

認知症の作業療法「 つながり感を保つために」

1身体機能の活性化をはかり  手指の活動から座位 → 立位 → 歩行

運動による不安感の軽減

運動による快感体験の想起

運動機能 筋力向上より協調運動

@お手玉

2長期記憶を活性化して

長期記憶をいかに活性化するか

当事者の社会的な背景に介護者が関心をもつことからきっかけをつかむ

繰り返しの中に変化を誘う。

@絵画 お絵かきの感覚

@唱歌  歌を歌うこと

3 介護者と当事者が良好な関係を維持すること

介護者が常に新鮮な気持ちで当事者に接するために

@規則的な生活時間

@介護者の睡眠時間の確保

@記録することの意義

4.セラピストは「 白鳥の最後の声を聞く」心構えで

セラピストの立場はいろいろ(地域支援チームの一員・デイケアスタッフの一員・病院スタッフの一員・家族)

セラピストの役割は

@身体接触によるつながり感の維持に貢献

@長期記憶の想起に広がりを持たせる経験

@身体運動経験の活性化

 

事例 Fさん

大正6年生まれ 93歳

4年前に施設入所

既往歴: 左大腿骨頚部骨折・リウマチ性筋痛症

入所時 の長谷川式7点

2年前に 胃瘻増設

家族: 夫死別・近隣に娘家族3世帯 ・訪問あり

作業療法プログラム 20分 週1回

  • 四肢のマッサージ
  • ROM
  • 筋力
  • 体操(自動介助運動 と自動運動)
  • ブロックボックス
  • 百人一首
  • 唱歌

 

事例 Sさん

昭和2年 84歳

デイケア週2回通所

6年前に認知症と診断

既往歴:高血圧症 脳血管障害 両膝の変形性膝関節症 腰椎圧迫骨折

杖歩行

家族:長女夫婦と同居

  • ROM
  • 手指・手のひらマッサージ
  • 膝関節・肩関節の反復屈伸運動
  • 長座位の開脚運動
  • お手玉
  • ぬりえ
  • 写生・スケッチ
  • イメージ画
  • オセロ

Sさんのストーリー

幼少期お転婆であったことが繰り返され話されている。デイケアでは 集団でのゲームや体操に馴染めず孤立している。その時間にリハビリを受けていただくので当事者のリハビリに対する印象はよい。反復される話題は 仲のよい兄の話、結婚後の話、戦時中の話が定番である。兄について鉄棒をよくしたこと 幼稚園になじめずお絵かきにならいにいっていたことがよく話される。夫は海外航路の船長で 戦時中から船にのっていた。留守宅を守っていた。戦争中は母と家を守っていた。夫は兄の学友。

【お手玉】

評価   ・お手玉活動歴があった

  • 頚椎症と思われる手のしびれ感は 1年観察して進行していないと考えられた。
  • 手指の巧緻性は 稚拙ながら鉛筆把持は可能
  • 幼少期からの両手使いであった。
  • 肩の痛みの訴えはあったが現在はなく 上肢帯筋力は4程度ある。
  • 座位バランスは良好だが 膝関節筋力弱く体の支えに不安がある。

お手玉の導入

  • 臥位のROMの時のフリートークで いつもの話の中で幼少期の話題がでる。
  • フリートークで お手玉などの話題に乗りやすい
  • 座位では 身体の運動を膝で支持できるよう足の下に5cmほどの台をおく。
  • セラピストは 右隣にすわり お手玉のやり方をみせる。 はじめたらセラピストは 少し離れる。

お手玉

  1.  片手で10回連続
  2.  片手で 10回高く上げる。
  3.  お手玉1個を右から左 ひだりから右に投げ上げる。10回
  4.  安定して投げ上げられる回数を目安に高くあげてもらう
  5.  もう一つを渡しすきなように投げあげてもらう。
  6. 2つをお手玉できない場合は ひとつで投げ上げ回数をカウントする。

*sさんの場合 50までいった。

*sさんは 頚椎症の疑いがあるので 頭部後屈をし過ぎないよう回数コントロールをしている。

*数十年ぶりにお手玉をしてある程度初回に「できた感」を残すことができときどき実践できるプログラムになった。

【お絵かき】

・色塗り 2ヶ月に1枚の完成   作業の持続性が保てた

・写生2回   1回目は未完、形がとれなかったが 2回目は よくみて書かれているイメージ画 直線で水平線と地平線をイメージされ丸からはみかんをイメージしてぬることができた。

効果

  • 認知症状の進行予防
  • デイケア通所の継続

Fさんのストーリー

青森出身のFさんは12歳のときに 東京の女学校に出てきて学校の先生になった 。父は青森で校長をしていた。と話されている。娘3人の家族に恵まれ孫も多い。入所当初は 居室内の移乗動作でも体を支える下肢筋力があったが この1年の身体的な機能低下は著しく食事(経管栄養)と決められた時間以外はベット上で過ごされる。膝・股関節・手指関節の屈曲拘縮も重度である。 お話は出自のことにとどまり娘の名前は聞いても答えられないことが多くなってきている。セラピストことは 1週間に1回 20分だが 覚えておられよく笑顔を返され、「ありがとう」といわれることがある。社会性がかろうじて保たれている印象がある。ご家族が頻回にこられ話し相手をされる。ご家族が部屋に置かれているブロックボックスや 生花、は百人一首や 唱歌のCDを使って居室とベットでリハビリの時間をもっている。

【百人一首】

節をつけて読む   声を節にあわせることができたもの

  • 小野小町 花の色はうつりにけりないたづらに  我が身よにふるながめせしまに
  • 春道列樹 山川に風のかえたるしがらみは  ながれもあへぬ もみじなりけり
  • 右大将道綱の母 なげきつつひとりぬる夜のあくるまは いかに久しきものとはかしる
  • 僧正遍昭 天津風 雲の通路吹き閉じよをとめの姿 しばしとどめん

【文科省唱歌・童謡】

一緒に歌うことができたもの その季節に合わせて歌う。

  • 茶摘み          明治45 尋常小学校唱歌3年
  • 故郷             大正3    尋常小学校唱歌 6年
  • 春の小川     大正1    尋常小学校唱歌 6年
  • おぼろ月夜  大正3  尋常小学校 唱歌 6年

CDより人の声

茶摘み

夏も近づく八十八夜

野にも山にもわかばが茂る

あれに見える茶摘みじゃないか

あかねだすきにスゲの笠

参考HP : なつかしい童謡・唱歌・わらべうた・寮歌・民謡・歌謡

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